No.32 美女の演奏

 

 

呉服、洋反物類、嫁入小袖、お好みに応ず。琴平 東四條(元琴平町東四條村、現在は満濃町)。「はまや」こと、藤井商店。明治38年頃か。

バイオリンを奏でる洋装の女性の髪型は二百三高地髷である。洋風髪型の一種で日露戦争後に流行した、いわゆる束髪である。この束髪は前髪を大きく張り出させ、頭上に髪を高く突き出すスタイルであり、当時一世を風靡した。琴を弾く和服の女性とのコントラストが面白い。背景には、梅、竹、福寿草とお目出度い素材が配されている。

二百三高地とは、日露戦争(明治37年)で激戦が交わされた旅順北西に位置する標高203メ−トルの山で、戦略上重要であった旅順攻防戦の鍵となった要衝として有名である。